1.長期修繕計画の意義
マンションは各部分・設備によりそれぞれ劣化のスピードが違いますが、その劣化は大まかには予想されていて、修繕の目安の「修繕周期」として纏められています。そして長期修繕計画は、各部の修繕周期を基に作成されます。建物各部・各設備が、劣化し切って交換等の多額な出費を余儀なくされる前に、費用が比較的低額な修理ですませるという意味合いです。

また最近の物価上昇は皆さまご存じのとおりです。デフレが続いた30年とは違い、先日も総務省から2025年10月分で前年同月比で3%の上昇の発表がありました。仮に年率3%で上昇し続けると、10年後の物価は現在の約1.3倍(1.03の10乗)、20年後の物価は約1.8倍(1.03の20乗)となります。実際の工事費のデータはさらに顕著です。一財)建設物価調査会の『建設物価 建築費指数』で東京都、集合住宅、純工事費のグラフは、2011年1月を『85』とすると、2025年7月は『142』となっています。現在は潤沢な積立金を確保されている管理組合でも今後は大規模修繕工事実施が予定通りできなくなる恐れがあり、長期修繕計画の見直しは急務です。

2.長期修繕計画の見直し
① 管理会社が作成している場合
管理会社とよく話し合い希望点を伝え、長期修繕計画を修正してもらいましょう。修繕項目の設備の改修を実施した場合は、修正してもらいましょう。
② 管理組合がExcel 等で作成している場合
各種公表されている資料から修繕周期等を調べ、工事単価等は出版されている積算資料を確認、その他必要に応じて近隣マンションの方から聴きとるなどして見直しましょう。
★当事務所でも長期修繕計画書を Excel で作成し、データでお渡しします。各種設備の状況や配管材料を確認して修繕周期を再検討し、工事金額は最新の積算資料を基に当てはめるなど、現状に合った長期修繕計画を作成致します。理事会では毎年の定期総会に、修繕積立金の決算額を反映した長期修繕計画案の添付が可能となります。

以下、長期修繕計画を見直すにあたって、主な設備の注意点
① 給・排水管
腐食が進み管自体が薄くなると、配管内部の塗装工事ができなくなり、多額の費用を掛けての管自体の交換工事となります。特に給水管は、各専有部内も張り巡らされていますので、共用部だけでなく、専有部は一部リフォームが必要となる大掛かりな工事となってしまいます。また管の材質によっても寿命や漏水の発生しやすさ、腐食が多発する場所が異なります。適切な工事方法、最低限抑えるべき工事個所の見極めが大切です。共用部の竪管だけでなく、各お部屋の専有部分の床下配管も実施する場合には、リフォーム等で既に自分で工事した区分所有者へ、公平の観点から積立金を還付する必要が生じる場合もあります。そういった場合の還付方法、規約改正等総会議案の作成方法等もご提案いたします。

② 屋上防水・外壁
防水層の剥がれを放置すると、最上階に漏水となり、管理組合負担で漏水住戸の復旧工事をすることに。外壁コンクリートの接合部と窓枠のシーリングが硬化すると室内に漏水となり、こちらも管理組合負担の復旧となります。外壁タイルは、剥がれや浮きがあり脱落すると通行人にけがを負わせ、治療費等も管理組合負担となます。ただこちらはマンション保険でカバー可能かと。
なお、屋上防水は現状どういった防水仕様となっているか、そしてその劣化状況の確認が非常に大切です。多額の費用を掛けた完全無欠な工事でなくても、必要十分でリーズナブルな工事も選択肢かも。また屋上防水は必ずしも大規模修繕工事と同時に行う必要は無く、状態が良ければ切り離して延期することも選択肢です。当事務所では調査の上ご提案致します。

③ 鉄部
鉄製の玄関扉や、水道メーター・消防設備の扉、外廊下のフェンス等、腐食し切ってしまうと高額な費用での交換となります。適切な期間での塗装が、最も安く維持する方策です。こちらも大規模修繕工事で全箇所一律塗装とする以外にも、日光や雨が掛からない部分で劣化の少ない箇所を延期するなど、きめ細かい仕分けで工事費を下げることも可能な場合があります。当事務所では、見積の段階でご提案できることも。

④ 消防設備・揚水ポンプ類・インータフォン等
消防設備は、自動火災報知機やそれに付随する各装置でそれぞれ交換推奨年月が定められています。揚水ポンプの故障は断水につながりますので要注意です。インターフォンは7,8年に一度、メーカーで大きな機種変更があり、古い機種の部品は何年かすると製造中止となり、故障の際に修理が難しくなる場合がありますので要注意です。また故障部品はどの住戸も同じ部品のことも。そんな時は何とか部品交換で繋いで、メーカーの新機種発売後の一斉交換も選択肢かも。尚、現状のメーカーが『N社』でも次は『I社』で可能な場合もあり、各社で色々見積を取得するのも良いかと。

⑤ エレベーター
リニューアルは高額となるので、長期修繕計画に忘れずに盛り込みましょう。現状のエレベーターがロープ式か油圧式か、契約がフルメンテナンスかPOGかでリニューアルの方向が少し違ってきます。H社、M社等のメーカー系ばかりでなく、独立系のメンテナンス会社の方が一般には安く抑えられます。また耐震基準は地震後の2009年と2014年に大きく変更されていますので、年次点検報告書をご確認ください。竣工がそれ以前のマンションでは基準に満たない箇所は『違法建築』ではなく『既存不適格』という記載になっています。リニューアルの際には、どの基準まで満たす工事とするかで、工事費が大きく左右されるので、皆さんで十分話し合う必要が生じます。当事務所では各選択肢のメリット・デメリット等、管理会社が説明しにくい部分も、セカンドオピニオンのご提案を致します。

3.見直しの前提となる劣化調査
修繕周期等を基に作成した長期修繕計画ですが、計画途中で劣化の状況がその計画どおりの修繕で大丈夫かどうか、検討する必要があります。なぜなら各マンションの劣化状況は、その立地条件、設備は使用頻度等により違ってくる場合があるからです。一般的に長期修繕計画は、12~15年毎に実施される大規模修繕工事直後に作成されるケースが多いですが、12~15年の中間頃にも、1度は見直したほうが良いかと。
4.ガイドラインに基づいた計画
当事務所では、国土交通省の外郭団体で「マンション管理士」制度の母体の公益財団法人マンション管理センターが作成した、「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン活用の手引き」を用いて、長期修繕計画を作成すると共に、マンション管理士が実際にマンション各部の劣化状況を調査して、現実の劣化の状況を踏まえた長期修繕計画を作成致します。
